高血圧の診断基準が下がった???|たきもと内科クリニック|京都市山科の内科・消化器内科・糖尿病内科

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高血圧の診断基準が下がった???|たきもと内科クリニック|京都市山科の内科・消化器内科・糖尿病内科

高血圧の診断基準が下がった???

(令和6年4月より、高血圧の診断基準が変わった?)
皆様こんにちは。最近外来患者さんから「高血圧の診断基準が下がったので、薬を飲まなくても良いのではないですか?」という質問を複数受けました。え、私、高血圧の治療を日々行っているのにcatch upできていなくてそんな大事なことを知らないなんて、、、京都府医師会健康診査委員会の仕事もしているのに、、、穴があったら入りたい気分になりました。高血圧は140/90であり、世の中の潮流では、どんどん基準や目標値がすべての分野でさがっていってるのに血圧は診断基準があがったのか、、、、と思いました。
そして、色んな方への相談や自身の勉強したことを今回記載させていただきます。

高血圧の基準値は、1960年代は血圧の基準値は、年齢+90でした。つまり60歳の方は150以上、80歳の方は170以上が高血圧と診断されていました。1987年に、厚生労働省から180/100と高めの設定としました。その時の高血圧患者は日本人の6分の1でした(現在は3分の1です)。しかし、様々な研究やエビデンス(下げたほうが脳卒中、心筋梗塞が減少する)が海外、国内からでてきたため、だんだん基準が低くなってきて2000年には日本高血圧学会からの基準値を140/90まで下げました。それによって高血圧の人口はおおよそ人口の3分の1まで上昇しましたが、脳梗塞、心筋梗塞のイベント数は減りました。さらに基準が低くなって2019年日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」が発表されました。これがTVのCMでやっている130/80以上は専門家に相談しましょうと伊藤さんや高橋さんがお茶のCMでおっしゃっているところです。具体的には75歳未満、特定の基礎疾患がある方、血管リスクがある方は目標値が130/80以下になりました。これには多数の報告(有名なSPRINT試験)があり、140を目標にするより130にしたほうが、将来の脳梗塞、心筋梗塞のリスクを予防できると証明されたからです。以下は自論ですが、糖尿病でもそうなんですが、高齢者の方などは基準が75歳以下と以上で目標値が甘くなります。高血圧も糖尿病も脂質異常症も、元気な高齢者であれば、普通の方と同じであり、薬の副作用がでなければ、The lower, the better.と考えています。(ちなみに、診察室血圧は、緊張や歩いてきた方がおられるので、現在はどの先生も家庭血圧を一番参考しにしており、それは各マイナス5mmHgです。つまり朝起きた後の目標血圧は125/75となります。)

  • ここからガラッと話が変わりますが、先述の基準が下がったというのは、令和6年4月から全国健康保険協会(協会けんぽ)(健康診断)の基準(勧奨基準であり、診断基準ではありません!)が大幅に下がりました。高血圧の診断がまだされていない“未治療”の一般の方は、今までは140/90を超えると高血圧であり、病院受診をすすめる。だったのですが、4月からはこの基準が160/100となりました。厚生労働省がだしているのですが、この基準を採用した論文、エビデンスは現在も不明ですが、考えてみると、患者の数が10分の1減る、つまり医療経済を国が考慮したこと、および診察室血圧で高いよりも家庭血圧では低い可能性もあるから、とか、自身での運動、食事、ダイエットなでセルフメディケーションを期待して(厚生労働省は、病院での薬治療より、運動食事での治療を推奨します)だと推察します。
    この協会けんぽや健診からの発表で、患者様や現場の医師も混乱をきたしていますが、日本高血圧学会から注意喚起が以下の通りでています。

  • (日本高血圧学会HPから抜粋)

  • 変わったのは高血圧の診断基準ではなく、未治療の患者さんの受診勧奨基準です。
    協会けんぽからの受診勧奨基準である、
    ① 収縮期血圧(上の血圧)が160以上 or 拡張期血圧(下の血圧)が100以上
    すぐに医療機関の受診を
    ② 収縮期血圧が140以上160未満 or 拡張期血圧が90以上100未満
    生活習慣を改善する努力を1ヶ月間した上で、”改善しない場合には” 医療機関の受診を。
    今回の誤解の要因として、①、②のうち、①のみをマスコミ、雑誌などが強調したたからではないか 

  • 以上をまとめると
    高血圧の診断基準も目標値も従来と変わりません。
    一旦ご自身で生活習慣の改善を試み”改善しない場合に” 医療機関を受診しましょうと緩和されました。いずれにせよ”下げた方が良い”血圧域という点に変わりはありません。現在高血圧で内服治療中の方について使用される「ガイドライン」は高血圧診療ガイドライン(日本高血圧学会編)となり、治療目標値は130/80(家庭血圧は125/75)ですのでご注意ください。
    文献
    標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版). 令和6年4月, (厚生労働省健
    康・生活衛生局)(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001231390.pdf)
    高血圧治療ガイドライン2019. (日本高血圧学会)( https://www.jpnsh.jp/guide
    line.html)

  • 追記1:協会けんぽ京都支部の方にご質問してご回答をいただきました。私の勘違いもありましたので追記させていただきます。160/100以上で病院受診勧奨に関しては、本年度からではない、11年前から同じ基準である。今年一部変更になったのは脂質異常症の検査値である。判定区分ABCD、C判定は要再検査、生活指導。D判定は要加療、病院を受診(下記の追記2を参照)。どのデータや論文を参考にしたかというと、日本人間ドック・予防医療学会からでている、要治療、要精検の基準値からとのことでした。協会けんぽ京都支部担当者様、ご教授ありがとうございました。

    追記2:
    日本人間ドック・予防医療学会の判定区分
    A:異常なし
    B:軽度異常
    C:要再検査・生活改善
    D:要精密検査・治療
    E:治療中

    血圧(収縮期)は、129mmHg以下(基準値)であれば「A:異常なし」、130~139mmHgであれば「B:軽度異常」、140~159mmHgでは「C:要再検査・生活改善」、160mmHg以上は「D:要精密検査・治療」と判定されます。Cはさらに細分化されています。
    C12 12か月後健診受診
    C6 6か月後再検査
    C3 3か月後再検査
    Dの通知をうけた場合は、すみやかな受診、1ヶ月以内の受診が望ましい。

    しかし、C判定の血圧140以上は自身で生活改善して再検査、つまりクリニック12ヶ月受診せず放置?次1年後受診となるのでは、、、これはなかなか納得し難いですね。。。その根拠となるデータを日本人間ドック・予防医療学会に質問しましたが回答は得られませんでした。しかし同学会HPのQ and Aに下記回答がありました。

    1回の人間ドックでは,高血圧という診断はできません。新しいガイドラインで示された高血圧の基準値は従来通り、診察室血圧が140/90mmHgとされ,変更はありません。

  • 高血圧の基準が変わらないのはagreeです。しかし140続く方は高血圧だが、1回では判断できないという理由で1年間放置ですか。。。早期発見し早期に運動療法食事治療を行って治療を介入し、合併症を少なくするのが目標では、、、、初期の軽症の患者様の拾い上げが健診の目標では、、、、1回の血圧では診断できませんと言い切るなら、血圧測定不要なのでは、、、、またこの件は勉強して追記してまいります。