高血圧。ナトリウム/カリウム比(ナトカリ比)とカリウム摂取量について|たきもと内科クリニック|京都市山科の内科・消化器内科・糖尿病内科

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高血圧。ナトリウム/カリウム比(ナトカリ比)とカリウム摂取量について|たきもと内科クリニック|京都市山科の内科・消化器内科・糖尿病内科

高血圧。ナトリウム/カリウム比(ナトカリ比)とカリウム摂取量について

尿ナトカリ比について

高血圧に対する治療はもちろん薬もありますが生活習慣病ですので、まずは生活習慣の改善が最も重要です。運動、食事、体重減少で必ずかなり改善しますのでいつも外来では上記説明し指導しております。運動は今回お話から省かせていただきまして、今回は食事のお話です。

塩分(ナトリウム)を摂取すると、血圧上昇や腎機能低下が生じますので、塩分制限はかなり指導させていただいております(高血圧治療ガイドライン2019)。高血圧の予防・改善のため、世界保健機関(WHO)が推奨する食塩摂取量は1日5g未満、高血圧学会は1日6g未満ですが、日本人の摂取実態は1日10.1gです。簡潔に表現するとナトリウムは体に毒、カリウムは大事な物質です。カリウムは、細胞の浸透圧を維持したり、酸・塩基平衡を維持したり、神経刺激の伝達をしたり、心臓機能や筋肉機能を調節したりする働きもあります。

食事から摂取したナトリウム・カリウムの直接的な評価は難しいのですが、実はナトリウムは摂取した量の90%以上が、カリウムは摂取した7080%が尿中に排泄されることがわかっています。つまり尿から接種した塩分やカリウムを計算できるのです。

私は外来の尿検査でスポット尿のナトリウム、カリウム、クレアチニン濃度から田中式(Tanaka T et al. J Hum Hypertens 2002)により食塩との1日推定摂取量を推定して説明していますが、残念なことですが塩分控えていますと本人がいわれていても検査をするとかなり摂取している方が多いのが現状です。

そこで塩分摂取量ももちろん大事なのですが、それと相対するカリウムを多めにとればナトリウムを相殺がある程度できることがわかってきました。それがナトカリ比の低下を目標とすることです。腎臓という濾過作用する臓器では、カリウムという重要な電解質が少ないと、濾過の網目が小さくなり、カリウムといっしょにナトリウムも再吸収してしまうのですが、カリウムが多いとあまりカリウム再吸収必要となくなり濾過の網目が大きくなり、結果としてカリウムとナトリウムを尿から排出するため、体に毒のナトリウムが貯まらないという機序です。

日本高血圧学会は、尿ナトリウム/カリウム比(尿ナトカリ比)ワーキンググループでは下記の値を目標値と設定しました。

至適目標 ナトリウム/カリウム 2未満

実施可能目標 ナトリウム/カリウム 4未満

ですので、当面は4未満を目標、高血圧の改善となると2未満が目標です。それこそが高血圧の予防と管理、脳卒中、心臓病、腎臓病の予防となります。

実臨床では、日本人の地域住民を対象とした大規模な研究で、尿ナトカリ比と血圧値との間に正の関連が認められていて、尿ナトリウムや尿カリウム単独の測定値よりも、尿ナトカリ比の方が血圧値との関連がより強かったことも報告されています。この測定値を健診の目標値に掲げている市町村も多数でてきました。

最後になってしまいましたが、カリウムが多く含まれているのは野菜です。野菜を煮たり焼いたりすると2割から3割カリウムが減ってしまいますが、一方で野菜量をたくさん摂るのは生野菜では難しいのでやはり煮るのがおすすめです。

冬はもうすぐ、寒くなると血管が収縮して血圧が高くなる方が多いです。ぜひ皆様もカリウムを意識して摂取し、塩分も控えて、ナトカリ比を抑えて血圧上昇をコントロールしていきましょう。

カリウム摂取量

日本人の食事摂取基準(2020年版)は、生活習慣病の予防を目的とした1日当たりの摂取量の目標量として、18歳以上の男性では3,000mg18歳以上の女性では2,600mgと設定されています。世界保健機構(WHO)が2012年に提案した高血圧予防のために望ましい摂取量は成人で1日に3,510mgとされています。

カリウムは、藻類、果実類、いも及びでん粉類、豆類、肉類、魚介類、野菜類などに多く含まれます。生鮮食品に多く、加工や精製が進むと含量は減少します。

 カリウムは水溶性で、煮たりゆでたりすると水に溶け出します。生野菜サラダで摂ったり、生の果物でとったりすれば、効率よく摂取することができます。

 カリウムはナトリウムの排泄効果があるので、みそ汁の汁物で食塩(塩化ナトリウム)含量が気になる場合は、カリウムを多く含む野菜などをたっぷり具として入れるとよいでしょう。

WHOが推奨するカリウム摂取量は1日約3,510mgですが、日本人の摂取実態は、1日約2,300mg程度であり、約1,200mg不足しています。

別紙のカリ活カードを用いて、400mg×3枚で1,200mg追加でカリウムを摂取するよう努力しましょう。