高血圧 ナトカリ比について
- 2024年10月30日
- 内科
皆様、こんにちは。今日はアメリカ大リーグで、怪我をしながらも大谷選手がワールドシリーズへ出場し、ドジャースが3連勝でしたね。仕事をしていたため結果しかみれませんでしたが、彼の今年の大活躍と怪我をしていても出場する踏ん張りは、日々疲れている私達への励ましのようでまた明日から仕事を頑張ろうという気持ちにさせていただいております。最後まで油断せずに怪我の悪化がないようにかつ世界一目指して頑張ってください。
本日は、尿ナトカリ比についてお話させていただきます。患者様の中には、こないだNHKの石原さとみさんのトリセツショーでみましたという方もおられると思いますし、今後かなり有名になると思われる言葉なので初めて聞いたかたはまた覚えておいてください。次回の高血圧治療ガイドラインにも記述予定とのことです。
高血圧に対する治療はもちろん薬もありますが生活習慣病ですので、まずは生活習慣の改善が最も重要です。運動、食事、体重減少で必ずかなり改善しますのでいつも外来では上記説明し指導しております。運動は今回お話から省かせていただきまして、今回は食事のお話です。
塩分(ナトリウム)を摂取をすると、血圧上昇や腎機能低下が生じますので、塩分制限はかなり指導させていただいております(高血圧治療ガイドライン2019)。高血圧の予防・改善のため、世界保健機関(WHO)が推奨する食塩摂取量は1日5g未満、高血圧学会は1日6g未満ですが、日本人の摂取実態は1日10.1gです。簡潔に表現するとナトリウムは体に毒、カリウムは大事な物質です。カリウムは、細胞の浸透圧を維持したり、酸・塩基平衡を維持したり、神経刺激の伝達をしたり、心臓機能や筋肉機能を調節したりする働きもあります。
食事から摂取したナトリウム・カリウムの直接的な評価は難しいのですが、実はナトリウムは摂取した量の90%以上が、カリウムは摂取した70~80%が尿中に排泄されることがわかっています。つまり尿から接種した塩分やカリウムを計算できるのです。
私は外来の尿検査でスポット尿のナトリウム、カリウム、クレアチニン濃度から田中式(Tanaka T et al. J Hum Hypertens 2002)により食塩との1日推定摂取量を推定して説明していますが、残念なことですが塩分控えていますと本人がいわれていても検査をするとかなり摂取している方が多いのが現状です。
そこで塩分摂取量ももちろん大事なのですが、それと相対するカリウムを多めにとればナトリウムを相殺がある程度できることがわかってきました。それがナトカリ比の低下を目標とすることです。腎臓という濾過作用する臓器では、カリウムという重要な電解質が少ないと、濾過の網目が小さくなり、カリウムといっしょにナトリウムも再吸収してしまうのですが、カリウムが多いとあまりカリウム再吸収必要となくなり濾過の網目が大きくなり、結果としてカリウムとナトリウムを尿から排出するため、体に毒のナトリウムが貯まらないという機序です。
日本高血圧学会は、尿ナトリウム/カリウム比(尿ナトカリ比)ワーキンググループでは下記の値を目標値と設定しました。
至適目標 ナトリウム/カリウム 2未満
実施可能目標 ナトリウム/カリウム 4未満
ですので、当面は4未満を目標、高血圧の改善となると2未満が目標です。それこそが高血圧の予防と管理、脳卒中、心臓病、腎臓病の予防となります。
実臨床では、日本人の地域住民を対象とした大規模な研究で、尿ナトカリ比と血圧値との間に正の関連が認められていて、尿ナトリウムや尿カリウム単独の測定値よりも、尿ナトカリ比の方が血圧値との関連がより強かったことも報告されています。この測定値を健診の目標値に掲げている市町村も多数でてきました。
最後になってしまいましたが、カリウムが多く含まれているのは野菜です。野菜を煮たり焼いたりすると2割から3割カリウムが減ってしまいますが、一方で野菜量をたくさん摂るのは生野菜では難しいのでやはり煮るのがおすすめです。
冬はもうすぐ、寒くなると血管が収縮して血圧が高くなる方が多いです。ぜひ皆様もカリウムを意識して摂取し、塩分も控えて、ナトカリ比を抑えて血圧上昇をコントロールしていきましょう。