内視鏡麻酔について part.1|たきもと内科クリニック|京都市山科の内科・消化器内科・糖尿病内科

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内視鏡麻酔について part.1|たきもと内科クリニック|京都市山科の内科・消化器内科・糖尿病内科

内視鏡麻酔について part.1

皆様こんにちは。最近、ニュースで高校生が歯科クリニックで抜歯処置(全身麻酔中)に挿管チューブが破損していたまま放置、酸素飽和度が低いのに治療を中断せず続行し、その後、蘇生後脳症、そして死亡してしまい、ご両親が訴訟をおこした事案がありました。まずはお亡くなりになった方へ御冥福をお祈り申し上げます。私はこれまで病院勤務のときは内視鏡麻酔の臨床研究、医学博士論文も内視鏡麻酔でしたので少しブログに書かせていただきます。今回の事案は完全なる医療過誤であり、過失があると思われます。死亡する可能性を説明し同意書をいただいていたとしても、絶対に免罪符にそれはならず、最終の帰結が若い方の重篤な既往歴が無い方の死亡となっていることも非常に問題となります。内視鏡麻酔も一歩間違えると同様の事件が起こる可能性はあります。だからこそ内科医も外科医もすべての医師、歯科医、そして麻酔をかけているクリニック病院の内視鏡室担当看護師、技士も麻酔に関する知識、経験、対処、そして当然ながら、周辺機器管理、万が一の急変時の対応のトレーニング、使用する麻酔薬剤の知識をつけておくべきだと考えています。ですので内視鏡麻酔のお話、話すとかなり長くなりますので、続編も含めてお話させていただきたいと思っております。

この事件の問題点は多数ありますが、酸素飽和度(体内の酸素濃度の値)が下がっていたのに手術を続行したことだと思います。麻酔科医がそばにいたり、看護師、その他の医師がいる大病院ならきっと誰かが止めたと思います。しかし小さなクリニックで院長の独断だったのでしょう。病院勤務のとき、研修医の若い先生が、緊急吐血で夜中人手が少ないときに同様のことが数件ありました。若い先生は必死で必ず出血を止めてやるという気持ちで周り特に患者さんの状態がみえていない状態で酸素飽和度が著名に低下したので、一旦胃カメラの抜去を命じました。結論はそれが正しいかは誰もわかりませんが、はっきりしていることは、胃カメラや処置、手術をしている時の死亡例は決して許されません。これを読まれている医療従事者の方々、ぜひそのような場面で、意外と執刀医は必死でやっているのはわかりますが、バイタルチェックができていないときがあるのでお声掛けしてあげてください。

また一方で、内視鏡麻酔を行っているクリニックはおそらくほぼ100%となっています。理由は様々ですが、時代の流れで、麻酔をしてほしい患者様が非常に増えたことが大きな理由です。わたしたちが研修医のときは内視鏡はしんどいものと患者様に理解していただき検査をうけていただくという患者様の献身なる気持ちで成り立っていましたが今はそういう時代ではありません。また内視鏡医の中には自分は上手だから麻酔はいらないと自信をもっている医師も多いです(麻酔をかけるのは技術が下手だから、麻酔をかける医師はへたくそと思っている)。でも私も自信をもっていますが、患者様から、検査の苦しさは許容範囲ですとはいってもらっても、完全に眠って検査してもらったほうが当然楽という患者様がおられます。よって私の考えでは医師は技術の研鑽は一生行うべきですが、麻酔を希望される患者様には麻酔をかけるべきと考えています。またここで問題点もあり、実際内視鏡麻酔をかけると、不慣れ、死亡すると訴訟になるなどがあるため、鎮静剤を極々少量で安全という名の無難つまり極少量で投与している例が散見されます。つまり十分に眠ることなく検査が施行される傾向にあるということです。日本消化器内視鏡学会の鎮静ガイドラインもconscious sedationを薦めるとあり、完全に眠らさなくて良いというコメントもありますが、これはおそらく、深い麻酔を全例してしまうと全国で数例の死亡例がでてしまい、一般的に安全なラインから上記コメントになったのだと推測します。一方で患者様の声を実際聞くと、完全に眠らせてほしいという言葉を多数拝聴します。その希望を無視することなく、一人一人の希望をかなえるのも個別医療であり、医師の使命とも思います。事故をおこさずかつ安全な麻酔を行う、これをするには薬剤の知識、経験、そして機器の準備、周りのスタッフの理解、協力さえあれば達成は容易に可能と考えております。少し長く、重苦しい話題で申し訳ありませんでした。また次回は明るいニュースを探してコメントさせていただきます。でも最近医療ニュースも暗い話題が多いですね。まだ京都は晴れていますが、台風接近中です。不要不急の用事以外は自宅でゆっくりしましょう。