レプリコンワクチン(コスタイベ®)について
- 2025年9月30日
- お知らせ
Meiji Seika ファルマのレプリコンワクチン「コスタイベ®」について自身で勉強したことなどを記載させていただきます。この文章はMeiji Seika ファルマの方にもチェックしてもらいました。
昨年、テレビ、雑誌などで世間を騒がせたワクチンが、次世代mRNAワクチンとも呼ばれる「レプリコンワクチン」です。昨年も当院で施行したときは、京都府で2件しかないクリニックであったことより、フジテレビ本社よりインタビューを申し込まれました(丁重にお断りいたしましたが)。
レプリコンワクチン(コスタイベ)(Meiji Seika ファルマ)は
1.mRNAワクチンをさらに改良したワクチンである
2.日本だけしか認可がされていない(本年は世界30カ国)
3.レプリカーゼというタンパク質がはいっているため効果が長期間保たれる。
という特徴があります。
レプリコンワクチンについて説明します。従来のmRNAワクチンを改良して開発された「自己増幅型mRNAワクチン」です。レプリコンワクチンの核心部分に「レプリカーゼ」と呼ばれる酵素があります。この酵素の働きにより、投与されたmRNAが細胞内で何度も自己複製され、スパイクタンパク質が大量に生成されます。通常のmRNAワクチンでは、1つのmRNAから1つのスパイクタンパク質が生成された後、mRNAは分解されますが、レプリコンワクチンでは複数回にわたってスパイクタンパク質が生成されます。このスパイクタンパク質は、実際のウイルスが細胞に侵入するために使用する部分と同じですが、ワクチンによって生成されたものは感染を引き起こす能力を持っていません。そのため、体内の免疫システムはこのスパイクタンパク質を「異物」として認識し、抗体を生成します。これにより、実際にウイルスに感染した際、免疫システムが素早く反応し、感染の拡大を防ぐことができるという機序です。
ここまでは非常に素晴らしい効果のワクチンで誰もが魅力を感じるところと思います。普通は半年で抗体が消失するのが約1年も抗体が持続するのですから。
しかし、ある一つの論文と看護倫理学会からの提言が物議を醸し出しました。それは、SNSや一部のメディアで「レプリコンワクチンを接種した人が周囲の人にワクチン成分を伝播させる(シェディング)」という懸念が広まったからです。しかしこれは結論からいうと全く科学的な根拠がありません。レプリコンワクチンはウイルスそのものを体内で生成するわけではなく、スパイクタンパク質だけを作り出す仕組みであるにもかかわらず、テレビなどでは、コロナウイルスを増殖する、そのため、他者にウイルスやワクチン成分を伝播させると報道されました。しかし、先程述べたようスパイクタンパク質というコロナワクチンが体内の細胞に入るための部分(スパイクタンパク質)を増殖させているだけであって、コロナウイルスを増殖しているのではないのです。さらにSNSでいわれている、このレプリカーゼが一生体内に残って大変といわれていましたが、これも間違えで8週間程度で体内で分解され消失するのです。実際、ワクチン接種者がCOVID-19に感染した場合、ウイルスの排出量が減少することが示されており、むしろ周囲にウイルスを広げるリスクが低下することが確認されています。
(参照:日本看護倫理学会「レプリコンワクチンに対する緊急声明を発表しました」)
(参照:Worse Than the Disease? Reviewing Some Possible Unintended Consequences of the mRNA Vaccines Against COVID-19)
さらに治験のときにワクチン接種による死亡者がでたのも反対する方の主張だと聞いています。しかしモデルナやファイザーのコロナワクチンでも死亡者はでています。それはどのワクチンや治験でもありえることで、今回のコスタイベが非常に高いわけではありません。ベトナムの治験(合計16,000人)による死亡例はワクチン接種者の5例、プラセボ(偽薬)接種者の16例、計21例が死亡に至っています。このうち、ワクチン接種に関連するものはなく、10例は新型コロナ感染に関連していると考えられ、うち1件はワクチン接種者、9件はプラセボ投与者とされています。(参照:Safety, immunogenicity and efficacy of the self-amplifying mRNA ARCT-154 COVID-19 vaccine: pooled phase 1, 2, 3a and 3b randomized, controlled trials)
当院では昨年に引き続き、レプリコンワクチンの希望者には接種いたします。昨年は1バイアルで15人接種と大変でしたが、今年は企業努力により1バイアルで2人接種です。希望者はまたお伝えください。できれば2人一組で予約していただくと助かります。
安全性
レプリコンワクチンの副作用については、従来のmRNAワクチンと同様の症状が報告されています。一般的には、接種部位の痛み、疲労感、頭痛などが多く見られ、これらは時間の経過とともに自然に治まることがほとんどです。
ベトナムで行われた大規模な臨床試験では、16,000人を対象に安全性が確認されており、副作用の頻度は以下のような結果が得られています。
・疼痛、圧痛、頭痛、疲労感:20~40%
・局所の腫れ、発熱、関節痛、悪寒:20%以下
これらの副作用は一般的に3日以内に解消され、重大な副作用(心筋炎や心膜炎など)は確認されていません。
まとめ
レプリコンワクチンは、少量の接種で強力かつ持続的な免疫効果を得られる次世代型のワクチンです。従来のmRNAワクチンとは異なり、mRNAが体内で自己複製する仕組みを持っており、これにより少ない投与量でも高い免疫効果が得られます。また、安全性についても従来のmRNAワクチンとほぼ同様であり、報告されている副作用は軽度から中等度のものが大半です。シェディングに関する懸念についても、科学的には根拠が乏しいため、過度に心配する必要はありません。